プラットホーム/波のうたびと
最寄りの駅はすぐそこだけれど
このままもう少しだけ君と
たわいもない話をしながら歩いていたい
それで君の乗る電車が発車してしまえば
もう少しだけ長く一緒に居られるから
そんな事を思っていても今僕は
改札を通る君を見送っていて
呼び止めようとして言いかけた言葉も
電車の音にかき消された
想いはいつも空回りしてばかり
好きな人に気持ちを伝えたい
ただそれだけの事
到着した電車と君の背中を見て僕は
無意識に切符を買って改札をくぐり抜け
乗り込もうとした君の肩に手をかけていた
二人きりのプラットホーム
かすかに響く踏み切りの音
背中に春の温かい風を感じながら
僕は今君へ想いを告げる
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