怪獣の人/麻生ゆり
 
変わってはいなかった
もう怪獣だけど
「久しぶりね」
と君は言う
はいはいそうですねそのとおりです
月日はこんなにも残酷になれるんですね
「今ね、こちらの方とおつきあいしてるの」
言いながらタコ星人を紹介する
「いやぁ、どうも…」
怪獣の彼氏は照れくさそうに
腕の1本で頭だか顔だかの汗をぬぐう
「や、これはどうも」
僕も一応大人の待遇をする
そしてしばし沈黙
それに耐えかねた元カノが口を開いた
「それじゃ私たちこれからご飯食べにいくから…」
彼女らはそそくさと街の人込みに消えた
後には
穴の空いたジーンズに
着ふるしてしわしわのティーシャツ
汚れたスニーカー
色落ちした野球帽を身につけた僕が
ぽつんと残された
大通りで周りに人々はたくさんいる
だけど僕はさびしかった
世界とは
僕と他者でできている
そんなことを
この雑踏の中で感じた
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