イデア/マッドビースト
 
てみると 

 コピーだったのかもしれないけど
 それでもやっぱり嬉しかったし
 夢中だった

 コピーされたなにか
 だとしても この味でこの形でこの色で
 他に何になれというのだろう

 思い返してみるとやっぱり
 嬉しかったし夢中だった 
 なにでできているかなんて
 どうだってよかった


 窓ガラスの向こうで
 コピーされた夕焼けが沈む
 コピーされた白い建物ばかりの
 コピーされた街で
 コピーされた僕達の
 コピーされた運命だとしても
 この体でこの痛みでこの不安さで
 他に何になれというのだろう
 なにが足りないというのだろう
 足りないことがなんなのだというのだろう


 コピーされた夕焼けが沈んだあとの
 コピーされた夜は
 真っ暗で本物と見分けがつかないほど真っ暗だった

 夜のあとには朝が来た
 それはやはりコピーされた朝だったけど
 この街にははじめてだった。

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