宵の挨拶/北街かな
 
らぬあくま
 私の月影に住みついて
 ほんとの影をむしゃむしゃ食らって息づき
 宵のときには決まってうるさくじゃまをしてくる
 何のじゃま?
 私の生存本能の妨害行為
 つまりは存在をじゃましてくるのです
 いつからかそばにいて私につらくあたってくる
 もう眠りたいよ
 心から笑いたいよ
 綺麗な声で歌いたいよ
 ひとの居るせかいへかえりたいよ
 だけどあくまは正反対のことを勧めてくる
 ぜんぶやめたいよ
 どこにも居たくないよ
 汚い言葉で叫びたいよ
 なにもかも、なくなってしまえばいい
 そんなこと、思ってないの
 思ってないんだよ、私はみんなに優しくしたく
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