春の雪/三之森寛容
春の雪
少し冷える手を
ポケットに
押し込めて
バスを待つ
路(みち)の向こう側
黄色の長靴履いた
ハシャグ子の手を
しっかりと握る母
若い親子が
なんだか楽しそう
路(みち)の向こう側
赤色の傘を差す
微笑む彼女の手に
重ねて握る彼
若い恋人が
なんだか嬉しそう
路(みち)の向こう側は
あたたかい風が
吹いているのかな…
深々と降る雪
積もる程の
雪で無いといいな
想いを廻らせ
心を震わす
路(みち)の向こう側
桃色のニットを着た
はにかむおばあさんの手を
大事に包むおじいさん
老夫婦が
なんだか優しそう
春の雪は
冬の寒さに
終わりを告げ
再び訪れる
春の暖かさを
急かすかの様に舞う
少し離れる
少し冷えた
小さな白い手に
ポケットに閉まった
温もりをゆっくりと伝える
雪で凍えてしまう
その前に…
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