実る/かんな
とおい秋に
実るものはなんだろう
わたしが実家の門を通るときに
ふと、かいだ
祖父が築いてきた
歴史のにおい
短いとも長いともつかない
毎朝はやく
仏壇に水をあげる、祖父
その光景を久しぶりに見た
お経を唱える
幼いころに口ずさんだ
なむみょうほうれんげきょう
と意味もわからず
いまでも
正確な意味など
わかっていないけれど
わたしのお経はきっと
祖父のためにある気がして
この壮大な農園で
たわわになった果物と
ばらばらになった家族を実らせた
祖父の心中は
いまでも知れない、どうしても
顔を見れば
考えてしまう
どうしてか、涙
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