海にうつむく/かんな
 
こたえはいつも
波打ち際にあるから
海をみている
らしくないなだらかな
涙は
とぎれとぎれに使う
不自然な単語とともに落ち
髪を
かきあげてかきむしる
指先に絡まる事実を
爪ではじく

春が
近いようで
またなびいて遠く
波のようにゆきつかない
ものがたりのない
感情たちは
きっと行き場がない
埋まったとおもっていた
ぽかり
あいた心の内は
涙で溢れることさえしらない

朝は
いつも平坦に訪れて
懐かしむ
夜の終わりの記憶をうばう
流れてゆく
涙の根源をさがしても
やはりゆきつかない
と諦める
もう一度だけ
薄まった思い出の色を

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