君が死んだ夜に/智鶴
 
僕が行く末を知らずにいた未来を
君は見事に嘲笑って見せた
致死量の毒を飲み込んでも
未だ死ねない僕を君は笑った

「貴方一人が死んだところで
 世界は相変わらず寂しいし
 相変わらず美しいものよ。」

そう言って君は夢のように
僕の前から命を消した
それを当り前のように見送って
僕は煙草の煙を吐き出した

紅い空

あれから毎夜
一人ベッドの上で
君の残像を抱きしめることも出来ずに
僕は悶えるように小さくなる
鋭い牙と醜い爪を隠して
僕は怪物に変身していく

「貴方に生きている価値が無いように
 この世の誰もが生きてる権利なんて持っていないの。」


君が笑うその夜に

僕は死んで



帰る場所を失ったように
僕は夜をさまよい始める
君の断片を探して

僕は夜の怪物で
君は死んだまま何も言わない


ねぇ
これじゃあまりにも皮肉じゃないか
戻る   Point(1)