肉−Born−/影山影司
 
のだ!

 壁を蹴って、くるりと宙返り。綱は緩やかに絡まって、そのままするりと抜けてしまう。

 液槽は一様になめらかな温度で統一されている。たとえ私が、冷たく世の中を悲観したとしても速やかかつ緩やかに私の心を暖める。同様に、沸騰するほど苛立ったとしても、その温度はすぐさま流出して私の身体に一℃たりとも残らないのだ。


 隣房の笑い声が聞こえる。ここは窮屈だ。


 豚小屋の豚のように、私は太るために血液を流し込まれて健やかに育っている。このままいくと、私の身体はこの液槽を破裂させてしまうかもしれない、と思った。だが、例によってその不安は緩やかに解消され、それでもいいかと考え
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