肉−Born−/影山影司
 
 罪状を忘れてしまったが私は禁固6720時間の刑期を勤めていた。生暖かくぬるぬるとした液槽に浸り、なるべく身を小さく丸めている。不思議なことにはじめ広々としていたこの部屋が、時間が経つに連れだんだんと狭くなっているのだ。罪の清算を済ませれば済ませるほど、私には制約と圧迫が厳しくのしかかってくる。幸いにして不幸、息苦しさを感じれど私の呼吸は停止していた。腹立ち紛れに壁面を蹴り飛ばすが、ゴム状の材質で出来ている壁は憎たらしげに私の攻撃性を吸い取った。
 しかも、囚われの身であるにも関わらず、私の腰の辺りには綱が結わえてあり、万が一の脱走に備えているのだ。綱を伝って私の肉体には栄養豊富な血液が運ばれ、
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