革命前夜/手乗川文鳥
 
、本当はただ間接照明が作り出した影だと―けれど私にはあれは私と違う私で私はその私がさっきから気になって仕方ないのにあの私は―彼女は―ずっと虚空を見つめている、こちらを向いているけれど虚空しか見ていなくて―本当ならば彼女こそ虚空のはずなのに、今私は虚空の彼女にとってただの虚空にもならない―




「嗚呼!鳥が落ちた!失速したんだ!!」




「僕は、螺旋がいい。そうすればきっと―
白い手が翻り
部屋は沈黙で翳る
僕たちは始まり

身体中を真っ赤にした君は真っ青な眼で
一度も振り返らず帰っていく
本当は振り返ったのかもしれない
別の方向へ向かった僕の方こそ
一度も彼女を振り返らなかった




「桜文鳥の雛を死なせてしまったこと、今になっても忘れられない。」
「ねえ、あの鳥は飛べば影を私に落としたかしらね?」
「無責任な言葉で、私を慰めても良い。」

今世界中の信号が点滅して、人類が一斉に歩き出す。私はその中にいない。私は点滅する信号の中の―光の粒子でありたい。





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