light the light/木屋 亞万
生まれる前の僕は壁に囲まれていた
生まれると同時に天井で蓋をされ
それからここはただの暗闇
立方体の箱で僕を飼いながら
肉体は日々の中で生存し続けた
目は目として、耳は耳として、口は口として、鼻は鼻として、手は手として、
すべての器官は、それぞれ肉体として、機能を果たしていた
生まれる前、空を見るのが好きだった
それが正方形に切り取られた空だったとしても
生まれるまではそれこそが僕にとっての空だった
星はゆっくり輝きながら空を牛歩で進んでいくのだ
生まれる前、花の香りが好きだった
春先に吹き込んでくる桜の花びらが美しかった
それが桜だと知らなくとも、それが桃色
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