時間の誕生/たりぽん(大理 奔)
 
蛍石(フローライト)の屈折系でねじ曲げる
透明ゆえの分光
赤道儀のその先で
一つとしてそろわない秒針を
幻想のように共有して
誰かの未来で僕たちはまばたきをします

季節から時計がはぐれてしまったのは
いつからだったのでしょう
わたしとあなたの時間が
ひとつにならなかったあの夏からでしょうか

  経験値を積み重ねるゲームに
  調教されていく秒針
  ずれていく振り子に気付いてしまう
  昼下がりの空腹

さやさやと笹をゆする風に
秒針を取り戻そうと
両手を星空にゆだねてみます
おおきな文字盤には
あいまいにまたたく星だけが
オルゴールのピンのように
水面を弾きます

音楽が聞こえるでしょうか?
調子っぱずれの鼻歌に
へたくそな口笛の伴奏が
そっと寄り添う肩先で
生まれるものが
あるのです

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