蛇行/aidanico
 
誰がいったのか知らないが、戦争が始まったのだと云う。それも聞く所に拠ると、青山のホテルの一室でだとか、はたまた九州の阿蘇のほうでとか、とんでもなく脈絡が無く、規模も理由も判らないまま只噂ばかりが先行しているのである。しかしこの機会に乗じて金儲けをしようという不逞の輩も勿論居ないわけではなく、機会を見計らって何か生物兵器でも開発してやるかという強欲さを見せているとの一説である。不景気であるのか知らないが、そんな種火ばかりの噂を信じる土竜たちは急いで引越しの準備をせねば為らぬと感じ、兎にも角にも火の出る方を避けなければと北へ北へと向かったのであった。爪は剥がれ、鼻は捥げ、土を掘る手さえ動
[次のページ]
戻る   Point(2)