うたう/かんな
朝陽が昇るまでのひと時は
忘れられない思い出を捨てるための
かなしい時間にならないといい
そっと歩き出していくには
ひとりでもふたりでも
優しさよりやさしい祈りが必要だから
眩しいくらいの朝やけの時間は
目を閉じても夢からはぐれないように
そっと誰かの手をつなぎたくなる
幸せを形にしたならいつも掴み切れない
だから薄っすらと現れはじめた影に
ひとすじの光で描いてみる未来
太陽もほんの少し立ち止まってみせる
絶え間なく輝いてほしい光は
現実と夢のあいだで
息切れた蛍光灯のように途切れて
でもそれはモールス信号のように
どこかに途切れない思いを送っている
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