知らないことについての断片/健
と積み上げてきたものたちが
音をたてて落下し
そして飛び去って行く
太陽の向こうに見えるのは
いつも知らずに飲み込んできた空気
積み上げていたときには気付かなかった風が
ジーンズと衝突して
かさついた音をたてる
吐き気がするほど綺麗な空から
また新しい傘が降ってくるのを見ても
僕はまだ 名前を呼ぶ行為を止められずにいた
「続いていくこと」
知らない (知らなかった)
たとえば もうすぐ消えてしまうこと
無駄な話ばかりするのが楽しかったこと
人と会うのが、面倒で、人がいないのが、面倒だったこと
空が好きだと言いながら、久しく空を見上げたことがなかったこと
人が壊れるということ
誰かに会いたかったけれど、それが誰かわからなかったこと
分かった気になれば、それで良かったということ
痛い、と口に出して言うのを夢見ていたこと
分かったふりをしてほしかったということ
終わってしまうということ
知らないことが多すぎるから、まだ終わってほしくはないということ
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