立春/笹子ゆら
 

嘘を吐くかのように
口をすぼめて
わたしを見つめて
まるで
泣いている猫のように

やわらかな愛を
腕の中に抱きしめて
つぶやきを携えた
一瞬の淋しさなのか
忘れた記憶を取り出して
浸るのは 感傷

震える瞳が奪った
あの日の青春が
静かに消えていくのを
視て


さしたる孤独もなく
希望もなく
ただ 冷たく満ちる 春

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