錦繍/水町綜助
できない
太陽をみた
*
人はらせん状のいのちを連ねそこに立ち
天体は林檎のようだった
木々は広げた葉や針先のいら立った葉をそよがせ
海は、海に落とした真夏のシャツのように
比喩をくつがえして波打つ
太陽はリンゴだ
人は紙きれで
ひらひらと裏表のない
球体を翻そうとして
おはようございますと
挨拶をする
たいていの人は笑顔を向けるかして
おはようございますと言い
こんな日々はその延長線上にあり
またその先頭にあっては過ぎ去っていくが
過ぎ去りながら
激しく飛ぶ鏃の
もっとも苛烈に空を切り裂いていく鋭角の先端にある
そして質量をもたない風圧に
球体を飛ばされ
呼吸を止め
気を失う
白い
おはようございます
おはようございます
昨日はほんとうに
ひどい雨でしたね
ええ、横なぐりの暴風雨
締めきった窓が
がたがたとゆれて
たくさんの雨粒を
うちつけていました
でも今朝はこんなに晴れて
ええ
窓をあけたら
こんなにも晴れて
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