しかんたざ/れつら
古い夢を見た
ドアの向こう側は赤く塗られていて
こちら側でノブに触れている
覗き穴からは配達夫のノックが肘から先だけ宙に浮いていて
振りかぶったところで細かく震えている
メトロノームを拡大したような時計の音が残響で
断面は見えないが刻まれていることだけは分かる
ドアノブは球状で余りに大きく握ることが出来ない
突き通る軸に任せて回そうとするが
X-Yが逆転した独楽にすぎない
空転する
空転する地面で古い夢を見た
私は立っているか座っているか横になっているかしかできないが
彼らは違う
腰を下ろしかけている者は撃ち抜かれ
立ち上がりかけている者は尻を蹴り上げられる
そ
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