アリゾナのマドンナ/結城 森士
 
りはもちろん処罰対象ですが、取るに足らないことです」
 肩、ぽんぽん。
 部下に肩を叩かれている部長は、どうしたことか恍惚とした表情を浮かべている。
 そのとき、恐るべき憶測が脳裏を掠めた。
 
 私はゆっくりとハンカチを取り出し、口元の涎をふき取る。
 疑惑は確信に変わった。
(間違いない…。溝口恵子は、
 気安く部長の肩を叩いているように見せかけて、
 巧妙に肩マッサージをしている…)



「…うむ。溝口くんがそこまで言うのなら、ま、仕方がないよなぁ、あはは」
 だらしなく笑う中年怪獣ゴンザレス。
 40過ぎのおっさんを20秒少々で洗脳するとは恐るべき女よ、溝口
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