最果て/山中 烏流
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/小指から、甘く痺れ/目線の先に柔らかくたなびく髪が見えた/少女が捧げたものは、小さな果実ひとつだったのに/瞳孔が押し広げられる感覚/彼の鼓動はあまりにも小さく、高鳴ることを知らないままだ/蛇の声は止まない/ユグドラシルの根は、無数の足なのかもしれない/顔より他が見当たらない、もしかすると溶けてしまったのだろうか/唇から生み出せるものは、吐息と唾液と言葉くらいだ/虚空を掴もうとする/かしゃり。乾いた音だけが響いた/少女は泣いているのか、それとも/見下されている感覚/今、笑っただろうか/億千と降る視線の海は、ただ痛みだけをもたらして/キリストは、首で泳ぎながら消えてしまった/少女が呟いた気がする/ぶつ切りの思考を制御せよ/。/
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