いっぽんのくだ/
佐野権太
私たちは
複雑で
ランダムな現象の絡まりのようにみえて
実は
いっぽんの管なのです
とめどなく押し寄せる水流を
茫然とひらいた口腔から飲みこみ
洗われるまま
わずかな幸せの摂取と
かなしい排泄を繰り返す
まっすぐな空洞です
ときおり耐えかねて
剽げた音を奏でてしまう
やわらかい夕陽に懺悔する
愚かな笛です
それが
なんだというのです
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