オレンジ色の月の夜/いのせんと
 

オレンジ色の月の夜でした
夏の余韻はどこにもなくなって
枯れ落ちていく葉音がカサコソと

年老いた猫が
にゃあ、と鳴く
目も合わせずに遠ざかる

「ひとりにしないで」

長く伸びた影が
つないだ手を引く

「さみしいよ」

私から離れずにすがり付く

「いっしょにいたい」

雲が月を覆う
私の涙も
見えなくなる


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