真っ赤なブルーに燃える太陽だから/aidanico
ーツクの氷山の険しい鮭取りは「今日は日がよくない」と繰り返していたそれというのも天候もあまり良い状態とはいえなかったがそれより何より男がうちで泣いている自分のことを思い出したからである。男は少年になり青年になり赤ん坊になろうとしていたが、一度だけポットの湯を出して誤って指にかけ、「あつい」と言った「あつい」は「あい」になり「あい」は「あ」になった。赤ん坊は悟った(一番最初のそのつぎに、おぼえるのは「あい」であるのだ)、鮭取りは皸で枯葉のようになった手をじっと見詰めていた。
美空に広がるのは燃える様な青、群青とひとはいう群青と人は呼ぶ群青は自分の名前がそれだとは知らないが群青であるための、日記や手帳の表紙のような凡庸な群青ではありたくないと常に思っている。そればかりか群青は夕焼けの中に溶け込んでマッチの日のような暖かさを手に入れたいとさえ考えている、夜が暗いのは朝に白い光が差すことを、群青は知っているかと橙に点る街灯は思う。
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