ピーマンショック/木屋 亞万
スクランブル交差点で
ゴツゴツした緑色の肌の大男が
巨大な鉈で素振りをしている
それは腰の回転を利用した
あの野球特有のスイングで
彼の腕が伸びきる頃に鉈はブンと鳴く
彼の周りにあった電柱や
郵便ポストや信号機や電話ボックスは
ことごとくスッパリと切れてしまっていて
彼の鉈のスイングのラインより上には
何も存在していなかった
自動車も自転車もビルだって例外ではなかった
「そんな夢を見たんだ」ジョンはソンに言った
「それとピーマン嫌いに何の関係があるんだい」
ソンは苦笑しながら、目の前のピーマンを指差した
「わかったよ。全部言うよ」ジョンは話を続けた
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