父発狂/三州生桑
 
「ビックリがゐなくなったの」と可愛らしい少女がつぶやく。
「ビックリって?」
コレ、と言って指さしたのは、私の原稿に書かれた『!』だった。
「どこからゐなくなったの?」
コレ、と言って差し出したのは、一枚の便箋だった。さう言はれれば、真ん中にうっすらと『!』が滲んでゐるやうにも見える。
何も書かれてゐない便箋を少女に持って来させると、私はプリンターで『!』を黒々と印刷してやった。少女は目を輝かせて喜び、私に抱きつき、キスをした。少女の長い長い舌が、私の口の中をねっとりとのたうち回る・・・。


それを見た父が、私と少女に向けて、血染めの木槌を投げ付けてきた。今しがた、飼ひ犬を撲殺し
[次のページ]
戻る   Point(0)