道化が居た/松本 卓也
嬉しくて
一人きりは寂しくて
何処にも居場所を見つけれず
それでも道化であるならば
今までよりはずっとマシ
見当違いなことを言ってみたり
期待を裏切ってみたりしつつ
罵られ嘲られ見下され侮られても
一人ぼっちよりはずっとマシ
舞台裏に立ち寄る者は無く
とうに飽きられ蔑まれ
羽毛より存在が軽くても
孤独であるよりずっとマシ
笑顔の化粧を落とすとき
一滴の水さえも要らない
止め処ない涙で十分なほど
洗い流せるのだから
笑われることしかできない道化が居た
自分を卑下したくないのに
他の術を見つけられない
ただただ同じことを繰り返し
やがて誰しもの視界の隅で埃をかぶり
飽いて捨てられるだけしかない
そんな道化が居た
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