喪カデンツ/
靜ト
親の声で
「老婆、老婆」
と呻いている。
ここかもしれない。いや、ここではないのだ。
もう一つ半券をちぎる。
噛みつかれるのは当然だ。
密集したザラメの木を抜けて
エキソンとイントロンの割合を憎み
折れかけたヒールは乳歯のようだと思い出す
これが最後だ。
テーブルでは開いた蓮の花が
「老婆、老婆」
と呻いている。
ここだ。ここなのだ。
隣人は握りすぎた手の汗でリアリティを増した。
この声は私だと気付いたが
蚊の羽音がそれを忘却させた。
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