物語詩「塔と鳥とクレヨン」-first wing-/青の詩人
1、 白
この深い森のどこかに
真っ白な塔が立っていて
その最上階で僕は生まれた
年月を感じさせない白は
来訪者の侵入を拒むようにも見えた
世界を自ら切り離しているようだった
その部屋には
塔よりも白い鳥が棲んでいて
僕は彼だけを描いて過ごした
鳥はとても澄んでいて
僕は彼をこころと名づけた
朝から晩まで飽くことなく描き続けた
部屋には小さな丸い窓があって
堅いベッドに仰向けに寝転ぶと
ちょうど月が見えるくらいの高さにあった
こころとともに月を見て
こころとともに夢に落ちた
夢の世界でもぼくはひとりだった
月は綺麗だった
僕に似ていたけれ
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