各駅停車/鯨 勇魚
 
た淡い光は流れて、
どこかしらに集まり、
ひしめき合いながら、
夜も、この車内のように、
輝いてしまうのか。
 
見下ろしたなら、
唐草模様だけが生きているようで、
景色に巻きつきながら、
ぼやけて過ぎていく。
そう、人間との関係に似ている。
自分もこの男性を利用して、
巻きついてみようか。
遠くには波打つ一線に、
静かな漁り火がある。
それは海岸線のむこうにある、
地平線との境なのだろうな。
 
「漁り火はね、
集まるの。
たくさん。でもね、
奇麗だけれど。だから。あたしは、
帰れなくなるんじゃないかな。」

何を言っているのだろう。
もう、大丈夫なはずはない。
べつに年下の男性に甘えるつもりも、
あんたに問い掛けた訳でもない。
自身に問い掛けただけなのに。
気にかけるなんて卑怯すぎる。
 
ほんの少し利用しただけなのだ。
うつむき、目を閉じて、
刻むオノマトペを体感しながら、
向かう場所は、だれにも秘密なのだ。

 



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