ぬくめる/かんな
 
冷え切った肌寒い朝に
わたしは毛布にくるまっては
冷え切った足先を
ぬくめる

例えば死というような
ことばの冷たさは
毛布にくるめても
いつまでも温まらない

エアコンやヒーターは
電気代がかかるので我慢をして
服を着こんでは
そこに暖をもとめる

誰かが息をひきとる
という場面に
わたしは相対したことがない
それは生ぬるい事実のようにおもう

温かい麦茶を入れる
プレゼントにもらったポットで
湯をわかしてはひととき
喉をうるおす

冷たくなったことばを
使うことをことのほか怖れて
毛布の上からでしか
触れられない

テレビのチャンネル
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