わたしが蛾/ふもと 鈴
 

「アタマ」でも「カラダ」でもないわたしの
心肺停止は明らかだ

(夕方には青くなる空気/かつてのわたしが呼びにいく)

ふれるたび ぬるぬるとして
蒸して暑いそのままを
不可分の悪さに おとしめる

(醜さにふくらむ自意識は 思い出のしっぽもぬぐえない
 目のうち、太陽ふたつも落とせない)


「わたしには、わたしには」

そうだ/ほほえみ
憎むべき 夏に生まれた
ほほえみがあった

(子供の頃 住んでいた袋小路に追いやった
 明日から盗んだ虫けらに似た)


  ―個体から抜け出した 言葉を地獄に突き落とし
   思い出、しっぽをちょん切った





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