いつか、何気なく笑って/松本 卓也
空がずっと遠くまで透けている
背中越しに髪を巻き上げた
涼風に乗って飛べるのなら
まだ誰も知らない世界へ
連れてってくれるならと
心から願うこともある
でも肩に下げた鞄も
歩き続けてきた両足も
放り投げるには重すぎる
駅に伸びる細い道の
小脇を飾るアワダチソウが
花弁を秋に揺ら揺らと
今日を耐えた男の影を
知らずの内に薄めては
黄昏に掻き消していく
何事でもない明日を
迎えに行くためだけの
道標を辿りつつも
いつか何気なく笑って
少し位は自分を許しながら
飛び立って行けたらな
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