ためらい/1486 106
 
それから四日後のことだった
とにかく面と向かって話がしたいと思い
近くのファミレスまで呼び出した

この前まであんなに激昂していたのに
会っていきなり「この前はごめんね」
予想外の態度に言葉が見つからず
君の話をだまって聞いていた

そして流されるように頷いた台詞
「別れた方がお互いのためになるよね」

本当はまだ君のことを嫌いになんてなれない
どうしてこんな時にだけ変に素直になってしまうんだろう


タクシーを待つ間のわずかな時間
沈黙が二人の距離を余計に遠ざけた
だけどあと少しだけ勇気があれば
間に合ったものがあったかもしれない

本当はまだ君のことを嫌いになんてなれない
一体どれが素直な気持ちだったんだろう
本当は君だって同じことを思っていたかもしれないのに
いつから素直になることがこんなに難しくなったんだろう


ドアを閉じてタクシーは走り出した
君は夜の街に消えていった
ためらいがちに終わった恋を
降りだした雨が冷たく濡らしていた

戻る   Point(0)