ちゃんと御飯だった/atsuchan69
世界じゅうの誰よりも尊い
僕の母ちゃんが作った
すこし味が濃いみたい、だけど
ホクホクしてあったかい
まごころのたっぷり染みた味だ
御菜はそれだけ。
でも、ちゃんと御飯だった
飾り麩の味噌汁付きで
さらに食後のデザートみたく、
黄色い沢庵がふた切れ
青磁の小皿に載って
今日あったことを
ぜんぶ母ちゃんに話すと、
なんだか安らかな息を吐(つ)かせる
芳ばしい香りの立つ、
父ちゃんの湯呑を掴んで
――あちっ。
なんて熱い焙じ茶だろうか!
月夜の静寂があたりを包み、
草葉の下では蟋蟀の鳴く
やがて母ちゃんも
円い卓袱台に座ると、
片割れの小さな湯呑茶碗を
暫く、じっと見つめ・・・・
白くか細い指で
そっと 握る、
いくぶん肌寒い神無月の――
頗(すこぶ)る細やかな、
ささやかな 夕べ
戻る 編 削 Point(31)