毛を舐める猫/
木屋 亞万
すべては私の中で完結する
世界との繋がりは完全に絶たれたのだから
私を捨てた自分勝手な人間と
妻と子を連れ去った理不尽な人間を恨む
愛する妻と子の分まで
私は毛を舐めている
私は孤独だ
私みたいな猫は山ほどいるのに
私は不幸だ
この世は不幸な猫で溢れているのに
幸せを潰す人間達のせいで
私は毛を舐める
朝、目覚めるたび
腹の毛を舐める
そして「好きだよ」と言う
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