独房の住人/
深重嘉夫加
ひりひりとおとを立てて「それ」は泣く
はたはたとしおの香りを地に這わせ
数時間前 数十キロ先に居た欲望は
孤独の広がるその早さに耐え切れず
遂にはかたい寝床を飛び出し
暗闇を裂き
朝焼けを越え
やわらかくあたたかな場所へ辿り着く
するとどうだろう
もはやあの孤独が
むしろ懐かしく
いとおしくすら思えてくる
そしてまた
何事もなかったかのように同じ時間をかけ
かたい寝床のある孤独へと帰る
戻る
編
削
Point
(2)