おびれ(草稿)/れつら
 

 島のことを思いながら
 島を眺めている
 島にはいない
 鳥は風穴も開けず飛んでいく

 船尻は尾ひれをつけてゆく
 吃逆の止まらぬ胸辺り
 持ち上がっては黙る気の迷い
 鷹揚と揺らす空行きの音楽

 オルカの足を思いながら
 さかさまの水面のうらでくちづける
 息が次げなくなったら足したげる
 差し込まれた舌が一筆でえがき
 離れたくちびるの潤い
 斜め下におとしたはにかみ

 オルカの足を絵にして
 ふたりの片羽根折り合わす
 亡骸の骨を繋げたら
 肉は水
 もりあがる丘のやわらかさ
 肉は波
 島のことはわたしのこと
 音にして聞く流離
 上腕を振り上げて急に
 風もおこせぬわたくし
 小唄のなじまぬ唇を
 唾で濡らす
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