壁のポスター/水町綜助
 
まり好きではないから
行かない
理由はわからない
パンを焼いてかじるように
海へ行き
山へは行かない

秒針の音は間延びして
不揃いで
いま少し寒い
山の朝と夜は寒い
そういうことかもしれない
日なたへ座る場所を移そう
あと少し右か左へ
そうすれば
もしも戻る方角なら
この町から
あのいま住む町へ
暑すぎる夏を
浮かべた

笑顔を傾げた小首の
青い光に横流されて風化させられる
骸骨の被った花冠の薔薇
幸せに囲まれた花
貼られているだけのポスター
40年近く昔の音楽祭の壁にはない
アナログ時計の中にこの部屋
僕は日なたの方が好きだ






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