スガイのこと/吉田ぐんじょう
 
スガイは或る貧しい村の生まれである
彼は五人兄弟の長男で
下は四人とも妹であった

スガイは十歳のときに夢を見た
光り輝く犬が お前は医者になれ と言う夢であった

スガイには両親が居なかった
最近まで生きていたのだが
流行り病にかかって
村から決して出てはいけない
外はおそろしい世界だから
と口をそろえて言い遺し
あっけなく死んでしまった

そういう環境からみた幻影であったのかも知れない

しかしスガイはそれを正夢だと信じた

そんな或る日
両親の遺した畑で豆を収穫した帰りに
古い医学書を道で拾った
スガイはそれをいっしんに読んで
薬は自分で調合しな
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