ひとつぶの容器/
かんな
手のひらをかざすと、
ひとつぶが生まれたてのように私になついた。
つめたいだけのものなど生まれてはこない。
葉からしずくが落ちては、
たくさんのひとつぶが足もとをぬらした。
えらばれるためになど生まれてはこないのに。
手のひらのひとつぶをつかまえて放さない、
ちいさな独占欲がわたしの中にあった。
ほんの一瞬の、心をしめらせた雨だった。
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