海のアルバム/佐野権太
しみたいに
ときめいた部分だけが膨張している
きっとそれが
正しいかたちなのだ
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海のアルバムをめくる
ときに闊達で
ときに照れている
やけに若い二人だ
瞬きの隙間を狙って
切り出された一枚、一枚
こんなふうに残すことは
いつか、しなくなった
フィルムに焼き付けた絵は
その場で確認することはできなかったが
写真屋で手渡される袋の厚みは
いつも尊い喜びにあふれていた
立ち止まって、仰ぐ
絶え間なく回転する
金属盤のような蝉の鳴声
この夏、残したものは
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