その天体の名/青の詩人
月を見ていたら
涙も
涙まじりの鼻水も
潮の味がしたから
海で生まれたこと思い出した
風は漣
木の葉は波音
空は海原
雲は島
月は
ぼくらを導く灯だ
ぼくはウミガメとして
あの光まで泳ぎきろうと
泳ぎきろうと
前足も後ろ足も必死でバタつかせた
けれど
少し遠すぎたようです
やがてやってきた
天使の羽雲が
少しずつ少しずつ
あなたを隠して
知らない場所に連れ去った
もう会えないと思った
次に会うときはきっと
違う星になっているから
ぼくが月と呼んだその天体は
いつか別の誰かにルナと呼ばれ
知らない顔
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