著しい退化/吉田ぐんじょう
ラーメンとか牛丼とかそういうような
生きていると実感するようなものが食べられない
霜は独特の味がする
空気と風と埃の味だ
自分がどうして生きているのか
分からなくなるような味である
・
机の前に座って手紙を書いている
手が震えてうまく書けない
罫線から文字がはみ出して
呪いの手紙のようになってしまう
仕方がないので封筒に向けて
手紙ありがとうとか喋り
声が逃げないうちにすぐ封をして
切手を貼って投函したりしているが
なぜか返事の返事はこない
声が悪いからだろうか
空に向かって発声練習をしてみるけれど
なんだかどこにも届かないみたいだ
空が果てしない
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