トーキョー/10min./石畑由紀子
 

いまも戸惑うもと子さんの身体には北海道の風が吹いていて安心する
飽和したビールグラスが室温になってゆくのをぼんやりながめて
北海道のみんなは元気?
そういえば私もここ2年会ってないんだよなぁ、とおもいつつ
共通の友人の近況をぽつぽつと伝えるうち
打ち上げ会場、私たちのあいだにゆるやかな
風が

君が私に
風を感じるならそれはこの地から吹いています
私の息はこの地から

私は



私は
この先どこに行くんだろうね
きっとどこへも行けないし
そしてどこへでも行けるんだろうね
私は詩を内包している
幹さんがキムの元へ向かうため漕いでる自転車のペダルのように
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