西瓜泥棒の夏/遊佐
 
僕を見つめて笑っていた

食いたいなら
食いたいって言え

好きなだけ
食ってみろ

種は、ちゃんと出せよ

おじさんと、
父さんと、
同じだね


最初は怒鳴って
次は拳骨
最後は、食べきれない程の西瓜を並べて

笑う

 *
スーパーの西瓜は
どれも綺麗で美味そうなんだけど、
あの日、
おじさんが教えてくれた美味しい音がしないんだ

糖度の高い西瓜を選らんで
指先で弾く

今も耳に残る、
その音は
もう何年も響いてくれない



食いたいなあ…
あの、
不味い西瓜を。



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