お菊と清十郎/星月冬灯
 

 私はお菊人形

 白い面(おもて)に紅をさした唇

 長い髪を粋に結い上げ

 ハイカラな着物をまとった人形

 
 自分で動くことはできず

 いつでもご主人さまの

 清十郎さまに操られるこの身


 感情も心も無い筈なのに

 気付けば私は

 清十郎さまに恋をしている


 想いは日に日に募り

 能面の頬を濡らすあまり


 けれど私は人形

 人間のように

 恋をしたって

 心をもったって

 所詮は作りものでしかなくて

 
 その内清十郎さまに

 恋人ができて

 私はこの世を怨み

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