山の手紙/yo-yo
 
い花の名前も知らない

カラマツソウ
ミヤマニワトコ
ウツボグサ
ハクサンオミナエシ
花は花
名前は名前にすぎない

深い森を抜ける
木々のささやきは鳥の言葉に似ている
近づくと黙ってしまう
逃げてゆく青い翅を追いかける
飛び交うものには名前がない
水底の小石はすべて透きとおっている
それは川だろうか風だろうか
この芳しい懐かしさ

斑紋のある魚が泳いでいる
お前はここで生きてここで死ぬのだろう
水のように優美ないのちだ
お前のやさしい鰭がうらやましい
その冷たい水に
ぼくの指先は三十秒も耐えられないけれど

振りかえると
赤子はたちまち老人にな
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