夏の変なこと或いは、幽霊の始まり/吉田ぐんじょう
ある種のぽかんとした気持ちで見つめた
・
やがて街灯がぽつぽつ灯り
途端に街は色を失う
昼間オールカラーだった人も建物も
全部白黒になってしまう
鮮やかなのは野菜や果物ばかり
赤い林檎や黄色い檸檬が
路傍に点々と落ちている
拾って齧る人々は
それぞれ赤や黄色一色に染まって
自信なさげに少し踊る
・
やがて本格的に夜がやってきて
そこここに
いるはずも無い人影が現れだす
今夜はあんまり大量なので
ちょっと困った
何しろ一歩ごとに袖を引かれたり
断りもなく背に乗られたり
体のまわりをぐるぐる彷徨われたりするのだ
鬱陶しいのでポケットに
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