糧/縞田みやぎ
 
るたびに上下した

僕は手をふらないようにして
戸口をはなれる
玄関をでるころには
背がひどく丸く
それでも 上ばかり見るのだ
ずいぶん走ったように思う
わきばらが狭まるようにして
ひり と いたむのだが
ふりかえるとまだ 台所のまどから
こちらに目がむけられている
せわしなく動くので
まだ
たべものが見つからないのだろう

日が高く 通りには
僕のような風体のものは あるいていない
人々は 靴をはいたり
はだしのまま あるいたり
だまったりいろいろと話したり
うつむけたりあしもとをさぐったり している
僕は靴をはかずにいたので
くつしたに砂がかんだ
にぎった手が汗ばんでいるので 広げると
もうひとつかみさえない てのひらのたべものが
すじにそってはりついている
それはひどくべたりとしててのひらは
息をするたびに上下し
僕は
上ばかり 見て

ひもじいなあ と
まるで にんげんのように
ことばを話す


 
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